▼これは↓僕がメインで使っている3ヘッドカセットデッキ内部
まず初めに、テープを走行させるための金属シャフト(キャプスタン)とゴムローラー(ピンチローラー)が左右計2つありますが、このカセットデッキはオートリバースではありません!
カセットデッキやラジカセのシャフトやローラーは各1個というのが一般的。このデッキはテープをより安定走行させるために2セット配置されているわけです。さらにシャフトはゴムベルトを介さずモーターでダイレクトに回しているので音揺れ(ワウフラッター等)を極力抑える仕様になっています。心臓部であるヘッドも録音用と再生用が別々になった3ヘッド仕様。 ん、3ヘッド??
録音と再生だから2ヘッドじゃないの?って思いますよね。
録音の音質にはあまり影響が出ないんじゃないの?って思われている縁の下の力持ち「消去ヘッド」の存在をお忘れじゃありませんか? 写真の向かって左側のやつ。
録音方式については以前も少しお話しましたが、ここでちょっとおさらいしときましょう♪
まず録音方式にはヘッドに高い周波数の交流電流をかけて記録する交流バイアス方式(ACバイアス)と直流バイアス方式(DCバイアス)があります。今回も話が複雑にならないようにザックリと解説しますね。
●交流バイアス録音方式のデッキやラジカセは音が良い
・・・70年代~90年代に流行ったラジカセ等はほとんどコレ
●直流バイアス方式は音が悪い!→音がカシャカシャで薄っぺらくて中低域の音に全くパンチが無い!
・・・近年作られたラジカセのほとんどはこの直流バイアス方式が採用されています。音が悪いのにどうして直流方式で作るの?答えはズバリ「製造コスト」を安くするためです。
そう構造が複雑になる交流バイパス方式ではパーツ点数も含め全ての面で採算が合わなくなっちゃうわけです。
それに今の時代、オーディオマニアの人以外わざわざテープに録音する人はいないだろう!っていう考えなんでしょうね。
録音が直流バイアス方式であっても昔録りためたカセットテープを再生するだけなら、ある程度の音質で再生は出来ますからね。勿論、機種にもよりますが近年の安いラジカセでもアンプ部の性能はかなり良いですからネ。
これは↑70年代中期ソニーのモノラルラジカセのヘッド部
先ほどのデッキとは違い2ヘッド仕様ですが録音の音も良いです。そうです、交流バイアス方式が採用されています。
で、今日の本題なんですが、向かって右側に見える白いやつが「消去ヘッド」、音を記録する前にテープの土台をキレイにする役割をやってくれるヘッド。例えば以前録音した音を消して新たに新しい音源を録音するためですね。
で、この録音の音質には直接関係が無いように思われる消去ヘッドにも大きく分けて2つの方式があるんです。この白い消去ヘッドをよく見てください。ヘッドの後にシールド線がつながっていますよね。そう、音を消すために電流を流すためのケーブルです。
続いてはこいつ↑これは近年に製造販売されているラジカセのヘッド部分。今度は先ほどの白ヘッドじゃなくてブルーの消去ヘッド。このブルーの後ろには電流を流すためのシールド線はつながっていません。どうしてか? 実はこの消去ヘッドには永久磁石が使われています。普段の再生時にはこのブルーヘッドは引っ込んだ状態になっていて、録音する際にこの写真のように録音ヘッドと同じ高さまで下りて磁気テープ面に接触するような構造になっています。そう磁気テープの磁性体面に磁石を接触させテープが横方向に移動すれば消去が成立するわけです。
近年のラジカセでブルーのヘッドが見えれば、その機種は永久磁石を使った消去方式が採用されていると考えた方がよいと思います。消去ヘッドに関しても先ほどの録音再生ヘッド同様、製造コストを抑えるために電気回路を使わない永久磁石が採用されているわけです。令和時代のラジカセはほぼこの永久磁石方式です。
電気式だろうが永久磁石だろうが不要になった以前の記録音源を消すだけならどちらでも問題ないじゃん!って思いますよね。
●従来のバイアスをかけて消す消去方式の「テープ無音部分」の音はノイズが少なくスッキリしている。その上に音楽信号が記録されてもその音源を邪魔しないレベルのノイズに仕上がる。
●永久磁石を使って消去したテープ面の音は、ノイズが多く「ボソボソ」した音が目立ちます。さらにその後記録される音源データーの再生時でもそのボソボソしたノイズは気になるレベルで残ります。再生音量を上げた際のノイズは顕著に判るレベルです。
近年、オークションやフリマで昭和時代のラジカセに人気が集中しているのは、デザインのカッコ良さは勿論ですがテープにも良い音で録音できるというトコロにも注目する若い人たちが増えて来たようです。以前お話しましたが、いち早くカセットテープの魅力に気が付いたのは女性なんですよね~ 僕の周りでにもカセットテープで音楽聴いている若いギター女子結構いますよ!ラジカセを愛用している若い人たちは「デジタルの音と違って暖かくて音にパンチがありますよね~」っておっしゃる方がほとんどですね。正解!みんな解ってるネ~ おじさんカンゲキ!!
ハイ、それでは今日のまとめ!
録音方式には音が良いACバイアスと音が悪いDCバイアスの2種類があるということ。近年のラジカセはネットで取説がカンタンにダウンロードできますから購入前にしっかり確認することをおススメします。ただこれはあくまでもテープにも録音してみたいという方へのアドバイスであり再生オンリーという方にはどうでもいい話かもしれません。
近年売られている海外製のラジカセは90%以上がDCバイアスと思った方がいいでしょうね! ザンネンながら消去ヘッドについても一部のオーディオ用モデル以外99%が永久磁石を使っていると考えた方がいいでしょう。
近年モノでも国内メーカーさんのラジカセは音質が良いACバイアスを採用しているモデルもありますよ。ただ消去ヘッドだけは永久磁石のようです。
〇良:ACバイアス方式(交流)+バイアス消去方式
△中:ACバイアス方式(交流)+永久磁石消去方式
×悪:DCバイアス方式(直流)+永久磁石消去方式
以上ラジカセご購入の参考にして頂ければ幸いです。
最後にもうひとつ重要な注意事項!
永久磁石を使った消去ヘッドのラジカセで再生時、もしテープが絡まってしまった場合は録音内容の一部が消えたりダメになってしまうことがありますから、再生前に鉛筆などを使ってテープのたるみをしっかり直してから再生するようにしてください。
昭和時代のラジカセの様にしっかりした電気的な消去ヘッドの機種は、もしテープがからまっても記録内容に影響をあたえることは少ないと思います。ただこれは磁気的な面でのお話。絡まればテープそのものに折れとかが入る場合がありますから、音飛びが絶対ないとは言えません。
永久磁石の消去ヘッドの場合はテープが絡まってヘッド面に接触した時点で録音内容に影響が出ます。(磁気的に)
電気的な消去ヘッドで再生時にもしテープ面が接触しても、録音時以外はバイアスをかけませんから接触しただけでは録音内容は無事です。
カセットテープは録音時間が長いやつほどテープの厚みが薄くなりますから、たるんだ場合絡みやすくなるのでご注意下さい。
120分や90分テープは避けた方が無難かもしれませんね。
▼ラジカセ大図鑑:amazon